第5話 公彦の青春時代

今回は、時計を少し巻き戻し、

公彦がバイクに乗り始めたころから、物語は始まる。


16才の秋、原付に乗っていた公彦のもとへ

250CCの単車がやってきた。


友人から買ったのだが、

高校生がお金を持っているはずもなく、

親にお金を借りての購入。

 


 

YAMAHA RZ250RR


初めての単車は思い入れも格別。

うれしくて、うれしくて。


しかし、借金も返さなくてはいけない。

体力しかない若者は、労働で返すしか方法がない。


「趣味の陶器 中村」は、当時の時給450円。

自分で勤務表を書き、学校が終わると店番をした。


意外と真面目に返済していたが、そこは高校生。

遊びたい気持ちも大きい。

時々脱走して、バイクに乗った。


今、この時の借金を完済したのか、

記憶があいまいなのは、

道楽息子のお決まりパターンだろう。

 

  

ただ、走っているだけで幸せだった頃。

現在もバイクがあれば幸せだ。

ということは、ずっと幸せが続いているのか。


高校を卒業する直前、事故で左足に重傷を負った。

ギブスをしたまま、東京の専門学校へ入学。

あっという間にバイク仲間ができた。


仲間が当時乗っていたのは、

FX400・VFR400R・FZR400・RZ250R・・・。


通学はバイク。

学校までのすり抜け競争。

帰りはシグナルGP.

気まぐれに始まるストッピー競争。


バイク便が出始めたころでもある。

都内の幹線道路はバイクだらけだった。


本物のプレス車は、速かった。

速度60キロ以上、絶対出さないのに!!!

 

いつも遊んでいた仲間達。

バイトが終わって仲間の家に行くと、必ず誰かがいた。

バイクの話しをしたり、直したり。

よく、都内を夜走りもしていた。

 

富士山 御殿場側 5合目にて

今でも時々遊んでいる面々。


昔は車検も保険も高かった。

今は全員リッタークラスに乗っている。

バイク環境は格段に良くなったと思う。

が、お互い背負うものがあるお年頃。


背負いながら、バイクに乗り続ける。

それが僕らの当り前。


当時のお金の優先順位。

ガソリン>バイク部品>安くてウマい飯。


お金はないけど、ヒマはある。

よく上野や郊外の解体屋に通っていた。


解体屋件中古車屋で、公彦は次のバイクに巡り合う。

KAWASAKI GPZ400 


この話は美也子がライターとして書いているのだが、

公彦と仲間達がこのバイクを見つけた当時を

想像して書いてみる。


「おぉ?GPZじゃん!」(目が輝く男たち)

「おおぉぉ~!!」(どよめく男たち)


「結構程度いいよな」

「値段もまあまあじゃない?」

「ここんとこがなんたらかんたら」

「ここもなんたらかんたら」

「やっぱ○○○だよなぁ」

「オレ買っちゃおうかな~」

「ど~する?買っちゃう?」


(長い時間、あ~でもないこ~でもないと語り合う男たち)

こんな感じだったのではないだろうか。

今も大して変わらないから想像するもないのだが。


新しいバイクを買う。それはかなりの一大事。

年齢に関係なく、誰もが心踊る1ページなのである。


RZ250RRは手放すつもりはなかったが、

「学生の分際で!!」と親に一喝され、

友人に格安で買ってもらった。

 

そして、専門学校を卒業。

親が勝手に就職先を決めていた。


行き先は、京都。

食器関連の会社である。

修行の名目で、3年はここで働けとのお達し付。

 

もちろん、バイクと共に引っ越した。

 

なぎさドライブウェイにて

勤務先でもバイク仲間ができ、一緒に遊んだ一コマ。


京都の街にも慣れた頃、

行きつけのガソリンスタンドに、RZ250を見つける。

不動車で、隅に置いてあったのだ。

聞いたら安く譲ってくれるという。


小学生のころ、近所の兄ちゃんが乗っていて

すごくかっこよく見えた、あのRZ250。

それがオレのものになるのか?!


ボロくても構わない。

絶対欲しい!!

 

少ない給料から、さらに食費を削り、RZを直した。

 

RZが動くようになり、同僚と走った1ショット。

 

「ちょっと待ってね~今直すから。」
出先でガソリンがオーバーフロー。


先を急ぐこともない、この頃。

仲間も笑って待っててくれた。


セッティングは合っていない、ブレーキは効かない。

直すところだらけのRZ250.

でも、直すより先に、乗りたくて仕方がなかった。


約束の3年が過ぎた。

公彦は、このまま実家に帰る気なんてカケラもない。

次の働き先を東京と決め、親に無断で会社を辞めた。


そして、公彦は再び東京へ。

 

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